書籍「ビッグデータ・ベースボール」に学ぶ ④進化する計測技術スタットキャストとトラックマン

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今回は、書籍「ビッグデータ・ベースボール」で欠かせないデータ分析の歴史を簡単にまとめてみようと思います。

はじめて導入されたのが今から10年前

はじめて本格的なデータ分析が大々的に導入されたのは、2007年頃に一部の球場に導入されたPITCHf/xというシステムでした。

これは球場内に3台の計測カメラを設置しカメラと物体認識ソフトが、投手の手元からボールが離れてからホームプレート上に達するまでの投球の動きを撮影します。

その映像からボールの速度、軌道、三次元での位置がリアルタイムで計算されます。

PITCHf/xの誤差は、球速にして1.6キロ以下、ボール位置は2.5センチ以下です。

さらにPITCHf/xはあらゆる球種を瞬時に判別することもでき、これによって初めて投球の球速や投手がある球種を何パーセントの比率で投げているかが、正確に追跡できるようになりました。

これが球速、球種、ボールの動き、位置を正確に追跡できるシステムの標準となる初の測定器になりました。

2009年にトラックマン導入

次に2009年にトラックマンというデンマークの企業が、レーダー技術を使って投球と打球を追う技術の実証実験をメジャーリーグの3つの球場で検証を開始しました。(この技術の呼称を企業名のトラックマンとしている)

ピッツバーグ・パイレーツの分析官フィッツ・ジェラルドはトラックマンPITCHf/xの違いをこう語っています。「トラックマンの数字は基本的にPITCHf/xと同じだけれど、違うのはPITCHf/xがホームプレートから見て15.24メートルの地点から20か所の異なるポイントでボールを記録しているのに対して、トラックマンはボールの全軌道を測定している点だ、、、、、それと、投手の腕の伸びだね」

トラックマンはバットスイングの速度やバットに当たった直後の打球の速度の測定も可能ですが、これよりも価値を見出したのが、分析官フィッツ・ジェラルドが語ったいわいる投手の腕の伸び=ボールの実効速度でした。

これは前回お話ししたタンパベイ・レイズがはじめてPITCHf/xを導入して取り組んだ投手のリリースポイントへのアプローチに関連しています。

PITCHf/xでは投手の縦のリリースポイントを示してくれますが、横のリリースポイントまではわかりませんでした。

これはすなわち、投手がホームプレートからどれくらいの地点でボールをリリースしているかを示せないというこです。

先にに述べた投手の腕の伸び=ボールの実効速度とは、実際の球速に投手がホームプレートからどれくらいの地点でボールをリリースしているかを加味した球速のことです。

例えば、同じ時速150キロの球速でも、投手のリリースポイントからホームプレートまでの距離が16.5メートルの場合よりも16メートルの場合の方が、実質的には速い球ということになります。

2013年のアリゾナの秋季リーグの試合に本格的に導入され、エンゼルスの左腕マイケル・ロス選手に対して行った解析データにより有効性が実証されました。

分析官フィッツ・ジェラルドはこの検証について「思ったほどの差はないように感じるかもしれないが、時速にして3.5キロほど速くなる計算だ。これはかなりの数字だよ。球速が時速150キロの時の打率と153.5キロの時の打率を比べれば、その違いの大きさが理解できると思う」と語っています。

2014年にスタットキャストを3球場から導入開始

2014年3月1日、ボストンのハインズ・コンベンションセンターで開催されたMITスローン・スポーツ分析会議において、MLBAMジョー・インゼリロが新たな分析ツールスタットキャストの発表を行いました。

これはグランド上でのすべての動き、すべてのステップ、すべての送球が瞬時に測定可能になり、数値化できるようになるというものでした。

ジョー・インゼリロは発表の中で「守備における走力面に関しては、これまでも目で見ることならできたのですが、数値化することは極めて困難でした。我々はこの現象が直接生まれる瞬間を目にすることができるようになり、そのデータを分析し、それが何を意味するかを知ることができるようになります、、、、、野球はセンチ単位のスポーツです。これから我々は、それが具体的に何センチなのかを示すことができるようになるのです」と語ります。

この実例をある試合のプレイ映像を用いてプレゼンを開始します。

それは、試合中のワンプレイ中のある選手の守備の動きに注目した内容をクローズアップしてのものでした。

外野に飛んだ打球をダイビングキャッチする映像の中で打球を追う選手は、毎秒4.6メートルずつ加速して時速29.8キロのトップスピードに達します。スタートしたのは打球に落下地点から24.6メートル離れた場所で、25.4メートル走って打球をキャッチ。打球を追ったルート効率は97パーセントで、ほとんど無駄のないルートを走ってボールをキャッチしたことになります。

この選手は打球の反応に俊敏さを示し、一歩目を踏み出したのはバットがボールに当たってからわずか0.2秒後でした。しかもこの選手の動きだけでなく、この打球を打った選手のデータも表示せれ打った打球がバットを離れた時の速度は時速141.3キロ、上昇角度は24.1度、飛距離は95.7メートル、対空時間は4秒。PITCHf/x にステロイドを投与したようなデータを示しました。

このようにMLABAMは、このような素晴らしいプレイのあらゆる側面が測定可能だということを示し、最後にインゼリロは「まだ表面的なところしか扱っていない段階です」と語ります。

この測定を行ったスタットキャストの仕組みをおおまかに説明します。

スタットキャストは2つの異なるシステムからの情報を融合させて、データを作り上げています。

レーダーをベースにしたトラックマンを使用してボールの動きを追いながら、スタットキャストはステレオスコープによる3D機能を有する2台の双眼カメラを使ってグランド上の全選手も追います。

カメラは全選手とボールの動きを録画し、それをトラックマンのドップラーレーダーから数値と同期され、選手とボールの動きはシステムのソフトウエアによって意味のあるデータへ変換されます。

PITCHf/xが投球の軌道、コース、速度などに関して行っていたことを、スタットキャストはグランド上のあらゆる動きに対して行えることになったわけです。

日本プロ野球でも導入開始

この発表のあった2014年3月時点で、2015年までには全球場にこのシステムを設置され現在に至り、さらに日々発達した膨大なデータ収集が行われています。

現在2017年に至っては、日本のメジャーリーグ中継(NHK)でスタットキャストによるデータを用いた放送を行っており、日本のプロ野球中継でも時折見かけるようになりました。

日本プロ野球ではトラックマンを楽天が2014年、アジアの球界に先駆けて初めて導入し、2016年にはロッテを除くパ・リーグ5球団とDeNAが導入しています。

ちなみに今季2017年は、現在最下位であるロッテと昨年最下位、現在5位の中日を除くセ・リーグ4球団が取り入れ開始しているそうです。

トラックマン、スタットキャストのメジャーリーグでの実用している動画などのまとめはこちらのブログサイトでご覧ください。

書籍「ビッグデータ・データベースボール」はトラックマン、スタットキャストをさらに詳細に説明しながら、データを用い成功を収めたピッツバーグ・パイレーツの取り組みを、様々な人間模様もふんだんに盛り込んで描いています。

是非一読してみてはいかがでしょうか。

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